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イエス・キリストという方は、天の言葉を語られました。その短い言葉は、時には人の肺腑をえぐる「殺し文句」でした。有名な山上での説教の中の、ひとつの例をご紹介しましょう。
「自分の宝を地上にたくわえるのはやめなさい。そこでは虫とさびで、きず物になり、また盗人が穴をあけて盗みます。自分の宝は、天にたくわえなさい。そこでは、虫もさびもつかず、盗人が穴をあけて盗むこともありません。あなたの宝のあるところに、あなたの心もあるからです」(マタイの福音書6:19-21)
自分のためにせっせ、せっせとためこんで生きること、これが現実ではないでしょうか。しかし、ためこんだ物は、死んであの世に持っていくことはできず、虫が食い、さびがつき、盗人に盗まれるし、そうでなければ腐っていくのです。そして、「あなたの宝のあるところに、あなたの心もあるからです」とのキリストの言葉は、実に私たちの心にグサッと刺さります。
実業家のSさんは、若い頃、奥さんの感化で神を信じ、神に仕える人となりました。一生懸命に建設業に励んで、もうけた物は、人々に愛を伝え、救いに導く働きのために気前よくささげました。その彼が重病にかかり、二十日以上も意識不明が続いていたときでした。家族は葬式の準備をしました。しかし彼は、フーッと息を吹き返し、言ったそうです。「まだまだ地上にいて、天に宝を積みなさいと神様に言われました。」
もうひとり、私の若いときに深く感銘を受けたご婦人がいました。下川キンさんといって、45歳で亡くなった方です。夫を戦争を亡くし、二人の子どもを苦労して育てました。大変貧乏でした。苦労するために生まれてきたような人生でした。しかし、若くして神を信じ、神に従った彼女の人生は、人を愛して人のために祈り、人に仕えて、人を助ける人生でした。
彼女が亡くなったとき、教会は彼女のために墓を建て、墓碑銘を刻みました。私はその墓碑銘を生涯忘れることはないでしょう。「ひとりの涙を拭い得ば/弱りし一羽の小鳥をば/助けてその巣に戻し得ば/我が生涯は無駄ならず」
彼女の生涯は、若い私の心に「神の国のリアリティー」を深く刻み込みました。
「地上にたくわえるのはやめなさい。自分の宝は、天にたくわえなさい」とキリストは言われるのです。
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